とある大学生の備忘録

映画の感想と日常のつぶやき

映画『第三の男』ダンディな洒落人に憧れるならこれを見よ!(ネタバレ感想)

  皆さんは白黒映画は見ますか?私は全くというほど見たことがなかった。だけど、大学の授業でレポート課題があり、英国小説1冊を選んで感想を書かなければならなかった。私は図書館に向かい、英国小説の棚の中でも一番薄そうな本を借りた(大学生は忙しい)。それがグレアム・グリーンのサスペンス『第三の男』だった。幸運なことに、この本がとても面白く、映画にもなっていることを知った。*1そして、この映画を見てみるとダンディズム・ノスタルジアデカダンスの大洪水であった。ということで、この作品はダンディな洒落人に憧れる人・愛と裏切りの大人の世界が知りたい人におすすめだ。ちなみに、この『第三の男』はオールタイムベストの常連であり、フィルム・ノアール*2の大家とされている。

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映画.com(https://eiga.com/movie/46413/gallery/)より

基礎情報

あらすじ

 第二次大戦後のウィーン。親友のハリー・ライムの招きでこの街を訪れた作家のマーチンは、到着早々、ハリーが死亡したことを知らされる。ハリーの死には三人の男が立ち会っていたと言うのだが、その三番目の男の正体を追って、マーチンは独自の調査を開始する。陰影や構図を凝らしたサスペンス・スリラー。(Yahoo!映画(https://movies.yahoo.co.jp/movie/13635/)より引用)

監督・キャスト

監督:キャロル・リード

ホリー・マーチンス:ジョゼフ・コットン

ハリー・ライム:オーソン・ウェルズ

アンナ・シュミット(ハリーの恋人):アリダ・ヴァリ

音楽

恵比寿駅の発車メロディーだったそうですね。誰しも1度は聞いたことがあるはず。


The Third Man / 第三の男

 

個人的評価

★★★★☆

全編を通じて漂うダンディズムに圧倒される。また、光と影を効果的に用いて、荒廃したウィーンが退廃的に表現されており、廃墟好きな私としてはたまらなかった。物語も単なる悪党懲罰サスペンスではない。

ただ、「第三の男」が誰かというトリックは開幕早々察せるため★4。

感想※ネタバレあり※

 

 

 

 

 

ハリー・ライムのカリスマ性

とにかくとにかく悪役ハリーがしぶい。

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http://www.reviewanrose.tokyo/article/454923806.htmlより引用

 この暗闇の中からヌッと出てくる時の顔。ダンディ…。ただ、顔だけに光を当てるの大変だったろうなと思ってしまう。

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https://blog.goo.ne.jp/esuapn8u6f/e/85d2609da00057e3f9bf95ed0aaba018より引用

観覧車の側でハリーが言ったセリフも印象的だ。

「ボルジア家の30年、争い続きのイタリアではルネサンスが開花した。兄弟愛のスイスでは500年の民主主義と平和で鳩時計止まりさ。じゃあな。」(『第三の男』字幕より)

かっこいい…!言ってることは決して人道的ではないけど、こんな言い回しができる人になりたい。というか、ハリーのインパクトが強すぎて主役が食われてる。

愛は人道も論理も超える?

ハリーは闇ペニシリン売買に手を染めて、多くの人の命を奪った悪党であって、この事実は決して揺るぐことはない。しかし、ハリーにはハリーなりの美学があったんだなあと感じた。それは、「マーチンを裏切らないこと」。

一見すると、マーチンをウィーンに呼んだのは、彼を利用するためであると思われますよね。でもそれなら、近くにいる人を利用すればいいのではないですか?だから、ハリーはマーチンを仲間にするために彼を呼びつけたと思う。それに、下水道のシーンでもハリーはマーチンを狙って銃弾を撃ったのかは分からない。反論の余地はたくさんあるけど、私はハリーはマーチンを裏切っていないと感じた。

一方でマーチンはハリーのことを裏切ってしまいますよね。警察に協力したりして。だから最後にキャロウェイ少佐に「僕は勝ったんじゃありません。負けました。」みたいなことを言ったんじゃないかなあ。そういう意味で、ハリーとマーチンは対比されている。

一方、アンナもマーチンに説得されてさえ、ハリーを愛しつづけた。「彼氏が実は大悪党でした」って言われたら、好きな気持ちも冷めちゃいそうなものだけど、でも愛ってそんな論理とか理屈とか超えてしまうものですよね。

実は小説では、アンナがハリーのことを無視せずに、腕をからませながら一緒に歩いてゆくっていうラストなんですよ。それって切り替え早すぎじゃないですか?とってつけたようなラストな気がして、私は映画版の方が好き。

『第三の男』が好きな人におすすめの映画

マフィアの愛と裏切りの世界に溺れませんか?

『カジノ』

マーティン・スコセッシ監督のマフィア映画の傑作です。マフィア達がかっこよくもあり、可愛くもあって、映画が終わるころにはそんな彼らが愛しくなっているでしょう。裏切り、裏切られるなかで愛とはなにか考えてみては?ただし、若干グロテスクな表現があるので注意。

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https://www.mottotv.jp/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%82%BB%E3%83%83%E3%82%B7-%E7%9B%A3%E7%9D%A3-%E6%98%A0%E7%94%BB-%E3%82%AB%E3%82%B8%E3%83%8E-%E6%89%B9%E8%A9%95-%E3%83%8D%E3%82%BF%E3%83%90/より引用



 

*1:というより、この本自体が映画の脚本の基礎とするために書かれたものであったのだ。

*2:フィルム・ノワール (film noir) は、虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画 を指した総称である。(Wikipediaより引用)