映画『生きてるだけで、愛。』現代社会に生きづらさを感じる人に(ネタバレ感想)
『生きてるだけで、愛。』っていうタイトルって、主人公の恋人が不治の病になってしまって、だんだん死に近づいていくなかで、「生きてるだけで幸せなんだ!」と気づかされる…みたいなストーリー想像してしまいませんか?(偏見)
少なくとも私はそうだった。そんな中、Netflixで配信されてるのを見つけて気まぐれで見てみたところ、実際は全然違った。この現代社会で器用に生きられない人、「苦しみながらも生きる理由って何?」と思う人にこそおすすめの映画です。
基本情報
あらすじ
同棲して三年になる寧子(趣里)と津奈木(菅田将暉)。もともとメンタルに問題を抱えていた寧子は鬱状態に入り、バイトも満足に続かない。おまけに過眠症のため、家にいても家事ひとつするわけでなく、敷きっぱなしの布団の上で寝てばかり。姉との電話やメールでのやり取りだけが世間との唯一のつながりだった。
一方の津奈木も、文学に夢を抱いて出版社に入ったものの、週刊誌の編集部でゴシップ記事の執筆に甘んじる日々。仕事にやり甲斐を感じることもできず、職場での人間関係にも期待しなくなっていた。それでも毎日会社に通い、家から出ることもほとんどない寧子のためにお弁当を買って帰る。
津奈木は寧子がどんなに理不尽な感情をぶつけても静かにやり過ごし、怒りもしなければ喧嘩にすらならない。それは優しさであるかに見えて、何事にも正面から向き合うことを避けているような態度がむしろ寧子を苛立たせるが、お互いに自分の思いを言葉にして相手に伝える術は持っていなかった。
ある日、いつものように寧子が一人で寝ていると、部屋に安堂(仲里依紗)が訪ねてくる。かつて津奈木とつき合っていた安堂は彼に未練を残しており、寧子と別れさせて彼を取り戻したいと言う。まるで納得のいかない話ではあったが、寧子が津奈木から離れても生きていけるように、なぜか安堂は寧子の社会復帰と自立を手助けすることに。こうして寧子は安堂の紹介で半ば強制的にカフェバーのバイトを始めることになるが…。*1
監督・キャスト
監督、脚本:関根光才
原作:本谷有希子
寧子:趣里
津奈木:菅田将暉
安藤:仲里依紗
個人的評価
★★★★★
共感できるところが多すぎて、常に泣いていた気がする。表に出す出さないは置いておいて、誰しも心の内側に生きづらさを抱えてますよね。この映画は「苦しみながらなんで生きているんだろう?」に明確な答えを提示する。この映画によって生きづらさは解決されないかもしれないけど、少しだけ心が楽になる人もいるんじゃないかな。趣里さんや菅田将暉さんの演技力や監督の映像美へのこだわりもすばらしい。
感想※以下ネタバレあり!※
寧子って私やん
結論:寧子って私。「寧子って生きてるの向いてないよな~」って某所某所で感じたし、その姿が私にオーバーラップした。
例えば、珍しく津奈木に料理をつくるぞ!って張り切ってスーパーに出かけたものの、お目当ての材料は売り切れてるし、卵を落としちゃってぐしゃぐしゃにしちゃうしで、散々なんですよね。やっとのことで帰ってきても、ブレーカーを早々に落としてしまって元に戻せない。そして暗闇の中で号泣しちゃう。
分かる!
何もかもがうまくいかなくって、「なんでこんなこともできないんや」って気持ちになることある。なんだか分からないけど、そんな日が定期的に巡ってきて、死にたくなる時がある。
他にも働き始めたカフェバーのオーナー夫婦と従業員の女の子と寧子の4人でお酒飲みながら話すシーンありますよね。皆暖かい人達で、ここならやっていけるかもと思って本当の自分を出してもいいんだと寧子は思う。そして、ウォシュレットの恐ろしさについて饒舌に語ってしまうんですね。そしたら誰にも理解されなくって、しまいには「大丈夫か?」なんて言われてしまう。
めっちゃ分かる!
めっちゃ気合うかもと思って、嬉しくてたくさん話していたら「今日テンション高ない?笑」とか言われて、凹んだりすることありませんか?私はすごくあるから、感情移入すると同時に恥ずかしくなった。
そして、ラストの屋上のシーン。寧子は言う。
「なんで私ってこんな生きてるだけで疲れるのかな?」
「私はさ、私とは別れられないんだよね、一生。いいな、津奈木、私と別れられて。」
と(´;ω;`)
皆が上手に生きているように見えるなか、自分だけが生きづらく感じる。他の皆もそれぞれ苦労しているんだろうな~とか思うけど、他人を羨むことをやめられない。苦しみながら生きる理由って何?
その疑問に対してこの映画はある答えを提示する。人と人が本当の意味で分かりあうことが出来ることなんて、ほんの一瞬しかない。でもその一瞬を得たいがために、人は人とつながろうとし、生きてゆくのだ、と。
ほんとそうですよね。接する人皆と仲良くなれる訳でもないし、悪戦苦闘してようやく人は人とつながれると私は感じる。言語のコミュニケーションだけじゃなくて、それを超えたところでつながりあえる瞬間ってある。しょうもないことで、本当に心の底から笑い合ったり、同じ映画を見て涙したりとか。そんな人が側にいるだけで、死にたい夜が乗り越えられたりするのだと思う。
圧倒的映像美
この画面がざらざらしているのは、画質のせいではない。関根監督がかなり映像にこだわっていて、16mmフィルムを使ったから。画面のざらつき加減から生々しさがあふれだしていますよね。エンディングテーマ「1/5000」もおすすめ。
世武裕子「1/5000」 ミュージックビデオ 『生きてるだけで、愛。』エンディング・テーマ
*1:公式サイトから引用